研究内容

① 肝炎ウイルスに関する研究

フラビウイルス科に属するウイルスにはフラビウイルス属の他に、HCVに代表されるヘパシウイルス属、ペスチウイルス属、ペギウイルス属から成ります。これらのウイルスは一本鎖のプラス鎖RNAをゲノムとして持ち、約3000アミノ酸から成るウイルス蛋白質が翻訳されます。翻訳されたウイルス蛋白質は宿主やウイルスのプロテアーゼによって切断されて種々のウイルス蛋白質として機能しますが、N端にあるコア蛋白質はまず宿主のシグナルペプチダーゼによって切断された後に、フラビウイルス属ウイルスではウイルス蛋白質のNS2/3Aプロテアーゼによって、ヘパシウイルス属、ペスチウイルス属ウイルスでは宿主のシグナルペプチドペプチダーゼ(SPP)によってもう1度切断されて成熟コア蛋白質となります。これまでにHCVのコア蛋白質の性状解析からSPPによるコア蛋白質の切断はコア蛋白質によるウイルス粒子形成や病原性発現に必須であることが分かってきました。また、SPPの3次元立体構造は不明でありましたが、私たちはSPPの阻害剤からSPPの活性中心付近の構造を明らかにすることができました。さらに、HCVのコア蛋白質とSPPの相互作用がMHC class I分子を介した免疫細胞の活性化を抑制することを明らかにし、HCVが高率に持続感染するメカニズムの一端を明らかにしました。現在は、SPPを阻害することで未成熟なコア蛋白質が分解されるメカニズムの検討や、SPPのさらなる基質を同定しウイルスの多様な戦略を1つ1つ明らかにしたいと思っています。

Nat Commun (2016), PNAS (2017)